長崎県雲仙市小浜町富津2791

ビジネス(商用)

島原半島に移住して農業を始めたい。
就農の流れと農地の探し方

移住して農業を始めるとき、農地は誰でも買えるわけではありません。
研修、農地の借り方と買い方、住まいの探し方、使える支援制度を、始める順番にまとめました。

移住して農業を始めるまでの4つの場面(相談、研修、農地探し、畑の作業)。下には、海と山を望む畑を歩く2人と、収穫したじゃがいも、にんじん、大根、いちごなどが描かれている
画像はイメージです。

「田舎に移住して、農業をやりたい」。
そう決めたとき、最初に動くのは農地探しではありません。
先に、就農の相談と研修から始めます。

田舎で農業をして生計を立てていくのは、簡単なことではありません。
収入が安定するまでには、時間がかかります。
天候や獣害、売り先の確保など、思い通りにならないことの連続です。
夢だけで始めて、数年で畑を手放す方もいます。

それでも、準備を整えてから始めれば、続けられる可能性は高まります。
順番を間違えると、買った農地で許可が下りない、作物が育たない、生活費が続かない、といったことが起こりがちです。
この記事では、島原半島で農業を始めるまでの流れを、農地と住まいの探し方を中心にご説明します。

この記事は、就農までの流れをつかんでいただくためのものです。
支援制度の条件は年度や市町村で変わるため、実際の内容は、県の新規就農相談センターや市の窓口にご確認ください。

なぜ農地は、宅地のように売り買いできないのか

農地の売り買いを決めているのは、農地法という法律です。
法律の目的には、耕作する人の立場を安定させること、国内の農業生産を増やすこと、食料を安定して届けることが書かれています。
農地は、食べ物を作るための限られた資源として扱われています。

この考え方の始まりは、戦後の農地改革です。
戦前は、地主が農地を持ち、小作人が借りて耕す形が広くありました。
農地改革で、国は地主から農地を買い上げ、実際に耕していた人に売り渡しました。
1952年にできた農地法は、この形を守るための法律です。
お金のある人が農地を買い集め、地主と小作人の関係に戻らないよう、農地を持てるのは耕す人に限られました。

今もこの決まりが続いているのは、農地が一度つぶすと元に戻しにくいからです。
値上がりを待つだけの持ち主が増えると、耕されない農地も増えます。
用水路や農道は集落で管理しているので、耕さない人が持つと、周りの田畑の作業にも支障が出ます。

一方で、耕す人が減って使われない農地が増え、法律は少しずつ変わってきました。
2009年の改正で、法律の目的は「持つこと」より「効率よく使うこと」を重視する形になりました。
2023年4月には、買う人の下限面積の条件もなくなっています。
それでも、農地を手に入れられるのが耕す人に限られる点は変わりません。
そのため、売り買いには農業委員会の許可が必要です。

島原半島は、畑作が盛んな地域です

県の就農支援サイトによると、島原半島の島原市・雲仙市・南島原市は、長崎県の農業産出額の4割強を占める農業地帯です。
畑作が中心で、にんじん、ばれいしょ(じゃがいも)、大根、レタス、ブロッコリーなどの野菜が育ち、ばれいしょは生産量が全国3位とされています。
トマトやいちごの施設栽培、肉用牛や養豚、酪農、養鶏も盛んです。

作物によって、必要な農地の広さも、機械も、始めるまでの費用も大きく変わります。
何を作るかは、研修を受けながら決めるのが現実的です。

農地は、お金を出せば買えるものではありません

農地を農地のまま買うには、農業委員会の許可が必要です(農地法3条)。
許可の条件は、主に次の3つです。

  • 買う農地を含めて、持っている農地をすべて耕作すること
  • 農作業に常に従事すること(目安は年間150日以上)
  • 周りの農地の使い方に支障を出さないこと

以前は、すでに一定の広さを耕作していることも条件でした。
この下限面積の条件は、2023年4月になくなりました。
畑付きの家を買うなど、小さな農地から始めやすくなっています。

そのぶん、農業を続けられるかどうかは、機械や働き手、技術の面から農業委員会が確かめます。
準備のない人には許可が下りません。
農地の売買の決まりは、「相続した田んぼや畑を手放したい。
農地ならではの決まりと手放し方
」にもまとめています。

就農までの道は3つあります

1つ目は、研修を受けてから独立する道です。
県の研修制度を使って、地元の農業者から技術を学ぶ方法があります。
南島原市には、みかんの研修農場(トレーニングファーム)もあります。

2つ目は、農業法人などに就職して経験を積む道です。
給料をもらいながら技術を覚え、そのあとで独立する人もいます。

3つ目は、親や親戚の農業を継ぐ道です。
市によっては、親元就農への支援もあります。

別の仕事を続けながら小さく始めたい方は、市民農園や農家の手伝いから試してみてください。
農作業に常に従事するという条件を、仕事との両立では満たせないことがあるからです。

農地は、買う前に借りるところから始めます

最初から農地を買うのは、お勧めしません。
作物も技術も売り先も、まだ決まっていないからです。
土の質、水の引き方、日当たり、獣害の出方は、住んでみないと分かりません。
借りて合わなければ、返せます。

条件のよい農地は、すでに地元の農家が使っていることが多く、空くまで待つこともあります。
借りる方法は、主に次の3つです。

  • 公益財団法人長崎県農業振興公社の農地中間管理事業を使う。
    農地の貸し手から借りて、担い手に貸し出す仕組みです
  • 市町村の農業委員会に相談する。
    農地の貸し借りの情報を持っています
  • 地元の農家から直接借りる。
    農業委員会の許可などの手続きが必要で、口約束のままにはできません

農地の場所や区域は、農林水産省の「eMAFF農地ナビ」の地図でも調べられます。
買うのは、借りて作ってみて、続けられる見通しが立ってからで遅くありません。

借りて作る期間は、農地を買うための準備にもなります。
借りた畑で作物を育て、直売所などで売って農業の収入を得る。
その収入を確定申告しておけば、耕作してきた実績を書類で示せます。

農業委員会は、買うときの許可の審査で、営農計画や機械、働き手を確かめます。
市町村によっては、耕作の状況を示す証明書の提出も必要です。
ただし、確定申告書の写しを実績の資料として受け付けるかどうかは、農業委員会ごとに違います。
どの書類で実績を示せるかは、借りる段階で農業委員会に確かめておいてください。

家探しは、農地とセットで考えます

研修のあいだは、賃貸で暮らすと身軽です。
農業を始める地区がまだ決まっていなければ、お試し住宅で暮らしてみる方法もあります。
お試し住宅の表は、「移住して飲食店を開く前に知っておきたい、田舎で店が続かない理由」にあるので、そちらも見てください。

農地付きの空き家を買うときは、家と農地の手続きが別になります。
家の売買は不動産の契約で、農地は農業委員会の許可です。
許可が下りるまで、農地の名義は移りません。
許可が下りなかったときにどうするかを、契約の前に決めておいてください。

家は、市の空き家バンクや当社の物件情報で探せます。
空き家バンクと補助金の案内は、「空き家の補助金・空き家バンク」のページをご覧ください。

使える支援制度があります

国には、研修中と独立直後の生活を支える資金があり、年齢などの条件が決まっています。

制度内容主な条件
就農準備資金研修中に月13.75万円。
最長2年
就農時に49歳以下。
県が認定した研修機関などで研修を受けること
経営開始資金独立後に月13.75万円。
最長3年
49歳以下。
市町村から認定新規就農者の認定を受けること
経営発展支援事業機械や施設を買うときの補助認定新規就農者など。
補助率や上限は年度と地域で違う
青年等就農資金日本政策金融公庫の無利子の融資認定新規就農者

金額は、農林水産省の令和8年度の案内です。
認定新規就農者は、就農計画を市町村に認めてもらった人を指します。
南島原市の案内では、対象は原則18歳から45歳の方と、特別な知識や経験がある65歳未満の方です。
50歳以上の方は、就農準備資金と経営開始資金の対象になりません。
融資や市の制度は、年齢の条件が違うことがあります。

市の独自の支援もあります。
南島原市の制度は、市外から転入して1年以内の就農準備資金の受給者への家賃補助(2分の1以内、月額上限2.5万円)です。
雲仙市では、県の研修を使って市内の農業者から学ぶ人に、月額最大5万円を最長2年補助しています。
ただし、雲仙市のページの更新は2024年6月なので、最新の内容は市に確かめてください。
島原市の窓口は、農林課です。

補助金は、条件を満たしても審査があり、必ず受けられるとは限りません。
農地や家を買う前に、窓口へ相談してください。

続けるために、先に知っておくこと

就農準備資金も経営開始資金も、年間で165万円までです。
これだけで暮らすのは難しいため、収入が安定するまでの生活費は、別に用意しておきます。

お金のほかにも、知っておくことがあります。
水田では、用水の管理が欠かせません。
土地改良区の費用(賦課金)がかかる場合もあります。
農道や水路の草刈りと泥上げは、集落で分担する地区があります。
イノシシなどの獣害から畑を守る柵や罠も、場所によっては必要です。
台風や大雨では、ハウスや畑に被害が出ることがあります。
売り先は、作物を決める前に考えます。
JAへの出荷、直売所、直接販売などの方法です。

農地の貸し借りは、地域の人の紹介でまとまることも少なくありません。
草刈りや集まりに顔を出して、顔を覚えてもらうことも、農地探しの助けになります。

就農までの順番と相談先

順やること相談先
1就農の相談。
地域と作物の見当をつける
長崎県新規就農相談センター、市の農林課
2研修を受ける。
最長2年
県の研修制度、市の研修(南島原市のトレーニングファームなど)
3就農計画を作り、認定を受ける市町村
4農地と住まいを探す。
借りてから買う
農地中間管理事業、農業委員会、当社
5農業委員会の許可を受ける農業委員会。
許可申請は行政書士
6経営を始める県の普及課、JA

順番は、人によって前後します。

当社ができること

当社は、農地や山林の売買を仲介しています。
農地付きの空き家や農地の探し方も、ご相談の対象です。
農地を買う・借りるときは、農業委員会の許可の流れを一緒に確認し、許可申請は行政書士と連携して進めます。
研修中に暮らす賃貸の戸建ても、探すお手伝いが可能です。

一方で、当社は農業の経営や技術の指導をしていません。
就農そのものの相談は、県の新規就農相談センター(諫早市、電話0957-25-0031、平日の9時から12時と13時から17時)や、市の窓口をご案内します。

農業を始めるまでの手続きは、相談、研修、農地探し、許可の順です。
急いで農地を買わず、先に就農の相談と研修を済ませておくほうが、買ったあとに困ることが少なくなります。
農地付きの家や農地を探す段階になったら、そのままご相談ください。

(※2026年10月2日時点の制度です。
金額や条件は、年度や市町村によって変わることがあります。)

このコラムは2026年10月2日に書きました。
制度や金額は変わることがあります。
本文中の「※〇年〇月〇日時点」もあわせてご確認ください。

ご相談は無料です

農地付きの家や農地の探し方、農業委員会の許可の流れなど、移住前の疑問をご相談ください。
就農の相談そのものは、県の新規就農相談センターや市の窓口をご案内します。
まだ移住を決めていなくても構いません。
お気軽にご相談ください。