ビジネス(商用)
島原半島に移住して農業を始めたい。
就農の流れと農地の探し方
移住して農業を始めるとき、農地は誰でも買えるわけではありません。
研修、農地の借り方と買い方、住まいの探し方、使える支援制度を、始める順番にまとめました。
「田舎に移住して、農業をやりたい」。
そう決めたとき、最初に動くのは農地探しではありません。
先に、就農の相談と研修から始めます。
田舎で農業をして生計を立てていくのは、簡単なことではありません。
収入が安定するまでには、時間がかかります。
天候や獣害、売り先の確保など、思い通りにならないことの連続です。
夢だけで始めて、数年で畑を手放す方もいます。
それでも、準備を整えてから始めれば、続けられる可能性は高まります。
順番を間違えると、買った農地で許可が下りない、作物が育たない、生活費が続かない、といったことが起こりがちです。
この記事では、島原半島で農業を始めるまでの流れを、農地と住まいの探し方を中心にご説明します。
この記事は、就農までの流れをつかんでいただくためのものです。
支援制度の条件は年度や市町村で変わるため、実際の内容は、県の新規就農相談センターや市の窓口にご確認ください。
なぜ農地は、宅地のように売り買いできないのか
農地の売り買いを決めているのは、農地法という法律です。
法律の目的には、耕作する人の立場を安定させること、国内の農業生産を増やすこと、食料を安定して届けることが書かれています。
農地は、食べ物を作るための限られた資源として扱われています。
この考え方の始まりは、戦後の農地改革です。
戦前は、地主が農地を持ち、小作人が借りて耕す形が広くありました。
農地改革で、国は地主から農地を買い上げ、実際に耕していた人に売り渡しました。
1952年にできた農地法は、この形を守るための法律です。
お金のある人が農地を買い集め、地主と小作人の関係に戻らないよう、農地を持てるのは耕す人に限られました。
今もこの決まりが続いているのは、農地が一度つぶすと元に戻しにくいからです。
値上がりを待つだけの持ち主が増えると、耕されない農地も増えます。
用水路や農道は集落で管理しているので、耕さない人が持つと、周りの田畑の作業にも支障が出ます。
一方で、耕す人が減って使われない農地が増え、法律は少しずつ変わってきました。
2009年の改正で、法律の目的は「持つこと」より「効率よく使うこと」を重視する形になりました。
2023年4月には、買う人の下限面積の条件もなくなっています。
それでも、農地を手に入れられるのが耕す人に限られる点は変わりません。
そのため、売り買いには農業委員会の許可が必要です。
島原半島は、畑作が盛んな地域です
県の就農支援サイトによると、島原半島の島原市・雲仙市・南島原市は、長崎県の農業産出額の4割強を占める農業地帯です。
畑作が中心で、にんじん、ばれいしょ(じゃがいも)、大根、レタス、ブロッコリーなどの野菜が育ち、ばれいしょは生産量が全国3位とされています。
トマトやいちごの施設栽培、肉用牛や養豚、酪農、養鶏も盛んです。
作物によって、必要な農地の広さも、機械も、始めるまでの費用も大きく変わります。
何を作るかは、研修を受けながら決めるのが現実的です。
農地は、お金を出せば買えるものではありません
農地を農地のまま買うには、農業委員会の許可が必要です(農地法3条)。
許可の条件は、主に次の3つです。
- 買う農地を含めて、持っている農地をすべて耕作すること
- 農作業に常に従事すること(目安は年間150日以上)
- 周りの農地の使い方に支障を出さないこと
以前は、すでに一定の広さを耕作していることも条件でした。
この下限面積の条件は、2023年4月になくなりました。
畑付きの家を買うなど、小さな農地から始めやすくなっています。
そのぶん、農業を続けられるかどうかは、機械や働き手、技術の面から農業委員会が確かめます。
準備のない人には許可が下りません。
農地の売買の決まりは、「相続した田んぼや畑を手放したい。
農地ならではの決まりと手放し方」にもまとめています。
就農までの道は3つあります
1つ目は、研修を受けてから独立する道です。
県の研修制度を使って、地元の農業者から技術を学ぶ方法があります。
南島原市には、みかんの研修農場(トレーニングファーム)もあります。
2つ目は、農業法人などに就職して経験を積む道です。
給料をもらいながら技術を覚え、そのあとで独立する人もいます。
3つ目は、親や親戚の農業を継ぐ道です。
市によっては、親元就農への支援もあります。
別の仕事を続けながら小さく始めたい方は、市民農園や農家の手伝いから試してみてください。
農作業に常に従事するという条件を、仕事との両立では満たせないことがあるからです。
農地は、買う前に借りるところから始めます
最初から農地を買うのは、お勧めしません。
作物も技術も売り先も、まだ決まっていないからです。
土の質、水の引き方、日当たり、獣害の出方は、住んでみないと分かりません。
借りて合わなければ、返せます。
条件のよい農地は、すでに地元の農家が使っていることが多く、空くまで待つこともあります。
借りる方法は、主に次の3つです。
- 公益財団法人長崎県農業振興公社の農地中間管理事業を使う。
農地の貸し手から借りて、担い手に貸し出す仕組みです - 市町村の農業委員会に相談する。
農地の貸し借りの情報を持っています - 地元の農家から直接借りる。
農業委員会の許可などの手続きが必要で、口約束のままにはできません
農地の場所や区域は、農林水産省の「eMAFF農地ナビ」の地図でも調べられます。
買うのは、借りて作ってみて、続けられる見通しが立ってからで遅くありません。
借りて作る期間は、農地を買うための準備にもなります。
借りた畑で作物を育て、直売所などで売って農業の収入を得る。
その収入を確定申告しておけば、耕作してきた実績を書類で示せます。
農業委員会は、買うときの許可の審査で、営農計画や機械、働き手を確かめます。
市町村によっては、耕作の状況を示す証明書の提出も必要です。
ただし、確定申告書の写しを実績の資料として受け付けるかどうかは、農業委員会ごとに違います。
どの書類で実績を示せるかは、借りる段階で農業委員会に確かめておいてください。
家探しは、農地とセットで考えます
研修のあいだは、賃貸で暮らすと身軽です。
農業を始める地区がまだ決まっていなければ、お試し住宅で暮らしてみる方法もあります。
お試し住宅の表は、「移住して飲食店を開く前に知っておきたい、田舎で店が続かない理由」にあるので、そちらも見てください。
農地付きの空き家を買うときは、家と農地の手続きが別になります。
家の売買は不動産の契約で、農地は農業委員会の許可です。
許可が下りるまで、農地の名義は移りません。
許可が下りなかったときにどうするかを、契約の前に決めておいてください。
家は、市の空き家バンクや当社の物件情報で探せます。
空き家バンクと補助金の案内は、「空き家の補助金・空き家バンク」のページをご覧ください。
使える支援制度があります
国には、研修中と独立直後の生活を支える資金があり、年齢などの条件が決まっています。
| 制度 | 内容 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 就農準備資金 | 研修中に月13.75万円。 最長2年 | 就農時に49歳以下。 県が認定した研修機関などで研修を受けること |
| 経営開始資金 | 独立後に月13.75万円。 最長3年 | 49歳以下。 市町村から認定新規就農者の認定を受けること |
| 経営発展支援事業 | 機械や施設を買うときの補助 | 認定新規就農者など。 補助率や上限は年度と地域で違う |
| 青年等就農資金 | 日本政策金融公庫の無利子の融資 | 認定新規就農者 |
金額は、農林水産省の令和8年度の案内です。
認定新規就農者は、就農計画を市町村に認めてもらった人を指します。
南島原市の案内では、対象は原則18歳から45歳の方と、特別な知識や経験がある65歳未満の方です。
50歳以上の方は、就農準備資金と経営開始資金の対象になりません。
融資や市の制度は、年齢の条件が違うことがあります。
市の独自の支援もあります。
南島原市の制度は、市外から転入して1年以内の就農準備資金の受給者への家賃補助(2分の1以内、月額上限2.5万円)です。
雲仙市では、県の研修を使って市内の農業者から学ぶ人に、月額最大5万円を最長2年補助しています。
ただし、雲仙市のページの更新は2024年6月なので、最新の内容は市に確かめてください。
島原市の窓口は、農林課です。
補助金は、条件を満たしても審査があり、必ず受けられるとは限りません。
農地や家を買う前に、窓口へ相談してください。
続けるために、先に知っておくこと
就農準備資金も経営開始資金も、年間で165万円までです。
これだけで暮らすのは難しいため、収入が安定するまでの生活費は、別に用意しておきます。
お金のほかにも、知っておくことがあります。
水田では、用水の管理が欠かせません。
土地改良区の費用(賦課金)がかかる場合もあります。
農道や水路の草刈りと泥上げは、集落で分担する地区があります。
イノシシなどの獣害から畑を守る柵や罠も、場所によっては必要です。
台風や大雨では、ハウスや畑に被害が出ることがあります。
売り先は、作物を決める前に考えます。
JAへの出荷、直売所、直接販売などの方法です。
農地の貸し借りは、地域の人の紹介でまとまることも少なくありません。
草刈りや集まりに顔を出して、顔を覚えてもらうことも、農地探しの助けになります。
就農までの順番と相談先
| 順 | やること | 相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 就農の相談。 地域と作物の見当をつける | 長崎県新規就農相談センター、市の農林課 |
| 2 | 研修を受ける。 最長2年 | 県の研修制度、市の研修(南島原市のトレーニングファームなど) |
| 3 | 就農計画を作り、認定を受ける | 市町村 |
| 4 | 農地と住まいを探す。 借りてから買う | 農地中間管理事業、農業委員会、当社 |
| 5 | 農業委員会の許可を受ける | 農業委員会。 許可申請は行政書士 |
| 6 | 経営を始める | 県の普及課、JA |
順番は、人によって前後します。
当社ができること
当社は、農地や山林の売買を仲介しています。
農地付きの空き家や農地の探し方も、ご相談の対象です。
農地を買う・借りるときは、農業委員会の許可の流れを一緒に確認し、許可申請は行政書士と連携して進めます。
研修中に暮らす賃貸の戸建ても、探すお手伝いが可能です。
一方で、当社は農業の経営や技術の指導をしていません。
就農そのものの相談は、県の新規就農相談センター(諫早市、電話0957-25-0031、平日の9時から12時と13時から17時)や、市の窓口をご案内します。
農業を始めるまでの手続きは、相談、研修、農地探し、許可の順です。
急いで農地を買わず、先に就農の相談と研修を済ませておくほうが、買ったあとに困ることが少なくなります。
農地付きの家や農地を探す段階になったら、そのままご相談ください。
(※2026年10月2日時点の制度です。
金額や条件は、年度や市町村によって変わることがあります。)
このコラムは2026年10月2日に書きました。
制度や金額は変わることがあります。
本文中の「※〇年〇月〇日時点」もあわせてご確認ください。
ご相談は無料です
農地付きの家や農地の探し方、農業委員会の許可の流れなど、移住前の疑問をご相談ください。
就農の相談そのものは、県の新規就農相談センターや市の窓口をご案内します。
まだ移住を決めていなくても構いません。
お気軽にご相談ください。