長崎県雲仙市小浜町富津2791

売却

相続した田んぼや畑を手放したい。
農地ならではの決まりと手放し方

相続した田んぼや畑は、家や宅地と同じようには売れません。
農業委員会の許可、買える人の条件、売れないときに貸す方法や国に引き取ってもらう方法などまとめました。

田んぼの前で考え込む女性。頭の中に、トラクターのある畑、農家と買い手の握手、書類と田畑が描かれている
画像はイメージです。

「田んぼも畑も、もう誰も作らない。
売ってしまいたい」。
親から農地を受け継いだ方から、こうしたご相談をいただくことがあります。

家や宅地なら、値段を下げれば買い手が見つかることもあります。
農地は、同じようにはいきません。
買える人が法律で決められていて、許可が下りるまで名義を移せないからです。

それでも、手放す方法はいくつかあります。
どの方法を選べるかは、その農地がどこにあり、どの区域に入っているかで変わります。

この記事は、農地の手放し方の全体をつかんでいただくためのものです。
実際の詳細な手続きは市町村によって異なるケースがあるため、農地のある市町村の農業委員会にご確認ください。
農地法などの許認可に詳しい行政書士のご紹介も可能です。

なぜ農地は、宅地のように売り買いできないのか

農地の売り買いを決めているのは、農地法という法律です。
法律の目的には、耕作する人の立場を安定させること、国内の農業生産を増やすこと、食料を安定して届けることが書かれています。
農地は、食べ物を作るための限られた資源として扱われています。

この考え方の始まりは、戦後の農地改革です。
戦前は、地主が農地を持ち、小作人が借りて耕す形が広くありました。
農地改革で、国は地主から農地を買い上げ、実際に耕していた人に売り渡しました。
1952年にできた農地法は、この形を守るための法律です。
お金のある人が農地を買い集め、地主と小作人の関係に戻らないよう、農地を持てるのは耕す人に限られました。

今もこの決まりが続いているのは、農地が一度つぶすと元に戻しにくいからです。
値上がりを待つだけの持ち主が増えると、耕されない農地も増えます。
用水路や農道は集落で管理しているので、耕さない人が持つと、周りの田畑の作業にも支障が出ます。

一方で、耕す人が減って使われない農地が増え、法律は少しずつ変わってきました。
2009年の改正で、法律の目的は「持つこと」より「効率よく使うこと」を重視する形になりました。
2023年4月には、買う人の下限面積の条件もなくなっています。
それでも、農地を手に入れられるのが耕す人に限られる点は変わりません。
そのため、売り買いには農業委員会の許可が必要です。

相続したら、まず農業委員会に届け出ます

農地を相続した人は、農業委員会への届け出が必要です。
相続で農地を受け継いだと知ってから、10か月以内に届け出ます(農地法3条の3)。
届け出をしなかった場合や、うその届け出をした場合は、10万円以下の過料の対象になります。

名義を変える登記(相続登記)も、2024年4月から義務になりました。
どちらも、売るかどうかに関係なく必要な手続きです。

農地のまま売るには、買う人に条件があります

農地を農地のまま売るときは、農業委員会の許可が要ります(農地法3条)。
許可を受けるには、買う人が次の条件を満たす必要があります。

  • 買う農地を含めて、持っている農地をすべて耕作すること
  • 農作業に常に従事すること
  • 周りの農地の使い方に支障を出さないこと

以前は、すでに一定の広さ(下限面積)を耕作していることも条件でした。
この条件は2023年4月になくなりました。
小さな畑でも、新しく農業を始める人が買いやすくなっています。

許可が下りるまで、名義は買う人に移りません。
そのため売買契約は、許可が下りることを条件にして結ぶのが一般的です。

値段は、同じ広さの宅地よりかなり安くなります。
買い手は近くの農家か、農業を始めたい人に限られます。
売れるまでに時間がかかることも少なくありません。

家を建てる人や業者に売るには、転用の許可が要ります

農地を、家の敷地や駐車場、資材置き場などに使う人へ売ることもできます。
この場合は、農地以外に使うための許可(農地転用の許可)が要ります(農地法5条)。

ただし、どの農地でも転用できるわけではありません。
農業振興地域の「農用地区域」に入っている農地は、原則として転用できません。
区域から外してもらう手続き(農振除外)は時間がかかり、認められないことも多くあります。

どの区域に入っているかの確認先は、市町村の農業委員会です。
農林水産省の「eMAFF農地ナビ」でも、地図から区域を調べられます。

太陽光発電の業者から、「農地を買いたい」「借りたい」と声がかかることもあります。
契約の前に、転用の許可が下りる見込みを確かめてください。
許可が下りなかったときに契約がどうなるかも、あわせて確かめます。
許可を待つあいだに業者が仮登記をした場合は、契約がなくなったあとで仮登記を消す手続きが必要です。

売れないときは、貸すこともできます

買い手が見つからないときは、農地を貸す方法があります。
貸しているあいだも、持ち主は変わりません。

県には、農地を借りて担い手の農家に貸し出す「農地中間管理機構」(農地バンク)があります。
長崎県で指定を受けているのは、公益財団法人長崎県農業振興公社です。
借り手が見込める農地であれば、機構が借りて担い手の農家に貸し出します。

近くの農家に直接貸すこともできます。
この場合も、農業委員会の許可などの手続きが必要です。
口約束で貸したままにしておくと、返してもらうときにもめることがあります。

ただ、山あいの狭い田畑や、道が細くて機械が入らない畑は、借り手がつかないこともあります。

国に引き取ってもらう方法もあります

売ることも貸すこともできないときは、相続土地国庫帰属制度を使う方法があります。
相続した土地を、審査を経て国に引き取ってもらう制度です。
農地も申請できます。

  • 審査手数料は、土地1筆につき14,000円です
  • 負担金は原則20万円です。
    農用地区域の中の農地や、市街化区域・用途地域の中の農地、土地改良事業の区域の中の農地は、面積に応じて計算します
  • 建物があるもの、境界がはっきりしないもの、抵当権などが付いているものは申請できません。
    通常の管理に過大な費用がかかる土地も、認められないことがあります

相続土地国庫帰属制度の詳しい条件は、「売れない家や土地を手放す方法」にまとめています。

放っておくと、どうなるか

放っておいた農地は、草や木が伸び放題です。
周りの田畑に害虫が増えたり、イノシシなどが身を隠したりする原因になります。

農業委員会は、毎年、農地の使われ方を調べています。
使われていない農地の持ち主に届くのが、今後どうするかを聞く調査です。
そのうえで農地バンクと話し合うよう勧告を受けると、その農地の固定資産税は約1.8倍になります。

相続人が決まらないまま年月がたつと、相続人が増えて話し合いが難しくなります。
これは、相続した家の場合と同じです(名義を変えずに放っておくと、相続人が何十人にも増えます)。

当社ができること

当社は、農地や山林の売買の仲介もしています。
買い手の候補は、近くの農家や、移住して農業を始めたい人などです。
空き家と一緒に売るなど、買う人が使いやすい売り方も考えます。
転用の許可の申請は行政書士、登記は司法書士と連携して進めます。

農地付きの空き家は、下限面積の条件がなくなってから、移住する人にも買いやすくなりました。
家と畑をまとめて売れば、畑だけで売るより買い手が見つかりやすいこともあります。


「もう誰も作らない」田んぼや畑でも、手放す方法は一つではありません。
売る・貸す・国に引き取ってもらうのどれを選べるかは、農地の場所と区域でほぼ決まります。
まずは、ご自身の農地がどの区域に入っているかを確かめてみてください。
区域が分からない場合や、登記簿の名義が古いままの場合も、そのままご相談ください。

(※2026年10月2日時点の制度です。
条件は、法改正で変わることがあります。)

このコラムは2026年10月2日に書きました。
制度や金額は変わることがあります。
本文中の「※〇年〇月〇日時点」もあわせてご確認ください。

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